滝谷便りno.31

 

no.31は恒文社発売の「新潟発」田舎暮らし滝谷からに掲載されたものです。)

  2004.7.1

月兎庵・庵主 中矢澄子

「一勝九敗、負け続きです。」

 

ミ〜ンミ〜ン。スイーーーッ・チョン、スイーーーッ・チョン。チリリリーーー。ゲコゲコ。コーンコーン。ブ〜ンブ〜ン。バリバリバリ ドッスン。 いよいよ夏本番。 セミ、カエル、キツツキ、アブ、そして落雷。自然界の大合唱が始まった。 

山の緑も5月には眩しい黄緑色をしていたが、ひと雨ごとに色は深まり、今では青みがかった、落着いた緑になっている。

さあー、オゾンいっぱい吸い込んで、畑仕事に精を出すぞ!と張り切って外に出てみると、いやはや、庭や畑の草たちも張り切って伸びているではないか。 ついこの間、草刈をしたばかりなのにと、呟いてしまう今日この頃だ。 

 朝霧が立ち上る加治川

毎年、冬の間に作物の植栽プランを立て、雪が解けると、今年こそは雑草に負けないゾ!と決意を新たに畑を耕し、苗を買い、肥料を準備し、大好きなトマトやトウモロコシ、インゲンやキュウリがたわわに実った姿を思い描き、収穫には誰を迎えて楽しい食卓を囲もうかなどと考えては胸弾ませるのだが、それも梅雨明けまで。

なんたって滝谷は、朝夕には露がたっぷり降りる上に、土は肥沃だから一雨ごとに作物が育つと同時に、その数倍の速さで雑草も伸びる。だから、このころには負け越しが決まりかける。それでも土俵際で頑張ろうとするが、梅雨が明け、日差しが一段と強くなるお盆ごろには、あっけなく4勝6敗で負け越しが決まってしまう。

わずかに実った作物は雑草ジャングルの中で半分萎びた姿でまばらに成っていたりする。その上、せっかくピンポン玉位に成長したカボチャさえ猿に持ち逃げされて、一気に気持ちが萎えて茫然自失。気が付いたら1勝9敗。誠に情けない。 

 

後は、シーズンを終えるまで人様の迷惑にならない程度に草刈りに励む日々。 こんなことが、もう何年も続いている。 だから当初250種類植えたハーブも今では数十種類になってしまったし、完熟のトマトは今だ一度も口に出来ないでいる。みずみずしいキュウリなど夢のまた夢。 

それでもしぶとく、まだ諦められないでいる私に追い討ちを掛けるように、ある日、テレビで有名人の「田舎暮らし」を紹介する番組が放映されていた。そこには、瀟洒な家のキッチンでニッコリ微笑んだ主人公が、レストランのメニューかと思わんばかりのご馳走を作っている姿が映し出されたかと思うと、次の場面では優雅に花を部屋のあちこちに、あしらっている姿や、また、ある場面ではカラー・コーディネートした洒落た作業服姿で、雑草一本生えていない畑で野菜を収穫している姿が映し出されていた。 それを見て「そんな訳ないだろ〜。次々に本を出版し、テレビにも出演し、どこに畑仕事をする時間があるんだ!これは演出だ!嘘パッチだ!!」と、ひがみ根性丸出しの自分がいる。

 村のあちこちに咲くミゾソバ 

 

自分はと言えば、たまの原稿や講演依頼にも四苦八苦。取材やテレビ出演の話が来ると右往左往。年数回の作品展でテンテコ舞。作業服はモンペに菅笠。瀟洒な住まいには程遠い庵。雑草ジャングルの庭に畑。それでも夢を見続けて、せっせと滝谷に通う。 何故ここまでするのかと、時折自問自答を繰り返す。この頃ぼんやりとそれが分かってきた。未完成に魅せられているんじゃないかと。 時折訪ねて来てくれる遠来の客は「このラフな雰囲気が好きだ!」と、言ってくれる。

 よっしゃー、今年も再度チャレンジだ!! 

今年は猿に持ち逃げされないように畑を屋敷の片隅に移した。屋敷の中だと目も届くから、今まで以上に世話もできると、踏んでいる。さぁー来い、夏よ!と言った心境でいるが、果たしてどうなることやら・・・。

 

 夏の花畑で一番元気なルドベキア

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