滝谷便りno.25

 

no.25は恒文社発売の「新潟発」田舎暮らし滝谷からに掲載されたものです。)

  2003.04.1

月兎庵・庵主 中矢澄子

[ スローライフの達人たち  ]

 

ある日、私のところに一通のe−メールが入って来た。「滝谷ってステキなところですね。空家はありますか?」どうやら私のホームページをご覧になった方からのようである。

私は花の試験栽培農園を造る為に滝谷を選び、頻繁に滝谷通いをしているうちに滝谷に惚れ込んでしまって、とうとう家までも買ってしまった。家を買い、アトリエとして使い始めたら益々滝谷熱は上昇するばかり。ついには我が終の棲家に!と思った。そこで連れ合いに、滝谷に引越して新潟の自宅はセカンドハウスとして使いましょうよ、とライフスタイルの変更を申し出てみた。すると、もともと街っ子の連れ合いは、目を真丸くして、とんでもないと言う表情をした。そして、どうぞ御勝手に貴女は滝谷で暮らしてください。お止めはいたしませんと言う素振りだ。困った。戸惑った。しかし思いはつのるばかり。そこでホームページを立ち上げて、滝谷暮らしの仲間集めをすることにした。

それから数年後。最近では「スローライフ」という単語が、やたら目に付くようになった。「効率、スピード優先の時代から、人間性を取り戻して、ゆっくりと豊かに、元気に暮らそう」と言うことらしい。その所為か、定年後には田舎で暮らしたいと、よく耳にする上に、私なんぞにも羨望の眼差しが注がれたりもする。確かに忙しさに忙殺される日々を送っていると、空気が綺麗で水が美味しくって自然が豊かな所で、のんびりと暮らしたくなる気持ちはわかる。現に私も滝谷で過ごしていると、やたら元気になる。って言うことは・・・私もスローライフしてるってこと??? ちょっと待って!

 確かに自然豊かで空気も綺麗な滝谷で過ごす時間が多くなって、気持ちも晴れ晴れ、元気もでるけど・・・。決してスローな暮らしなどしておりませんよ!!と言いたくなる。なんたって少しでも自分が食べる野菜を自前で賄おうと思えば、種蒔きから収穫までは、ほぼ3ヶ月サイクルでやって来る。庭だって、ちょっと草取りの手を抜けば、瞬く間に荒れて、見るに絶えない姿になってしまう。春の山菜、秋のきのこや茗荷など、自然の恵みを受けようと思えば、探して、収穫して、洗って、調理して食べるまでには、かなりの時間と労が必要だ。その上、生活を支える経済活動もと言うことになれば、ゆっくりと時間を過ごすことは無い。ましてや山暮らしの新参者の私なんぞ、何をするにも要領を得なくて何時もモタモタしているから、畑も庭も中途半端で終わり毎年反省の繰り返しだ。

それに控え、滝谷の村人達は、生活の佇まいが実に美しい上に、いい顔をしている。そして何より元気が良し、私の様にバタバタしていない。私は彼らにいつしか憧れさえ感じ、元気が良くて、いい顔したばっちゃんに成ってやろうと思っている。・・・そうか、もしかして、彼らはスローライフの達人?! そう言えば、全て一朝一夕に身に付くことでは無い。長い歳月を掛け、当たり前のことを当たり前にコツコツ続けて来た結果が美しい佇まいを生み出し、いい顔にもなるのだろう。決して一攫千金を狙っていては、スローライフの達人なんぞには成れない。

もし、スローライフをお望みの方がいらっしゃいましたら、私にe―メールを下さいな。共にスローライフの達人を目指しましょう。そしてお天道様と共に暮らし、風とおしゃべりし、木々の囁きに耳を貸し、雨と共に遊んでみましょうよ。

今以上に楽しい日々が来ることを願って。

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