滝谷便りno.20

no.20は恒文社発売の「新潟発」田舎暮らし滝谷からに掲載されたものです。)

 

「 冬支度 」

2001.11

月兎庵・庵主 中矢澄子

 トントントン。とんとんとん。

11月の滝谷はリズミカルな音が村のあちこちから聞こえてきます。そう、冬囲いの音。ここ滝谷は12月の半ばには雪が降り始めます。だから気の早いじっちゃん達は紅葉の真っ盛りの時期から冬囲いを始めるのです。この音を聞くと普段のんびり屋の私も気がせいてきます。樹木の剪定に雪囲い、来シーズンに向けて畑の手入れに球根植え。一番の大仕事は月兎庵の冬囲い。

 

さぁ冬支度の始まり。おっと、その前に先ずは戦の前の腹ごしらえ。月兎庵では昨年から冬支度のメニューに盛大な蕎麦打ち大会を加えました。

蕎麦づくりは友人たちと昨年から始めたのですが、初心者の私たちは何も知らないので六日町の蕎麦打ち名人、大津さんから蕎麦栽培のレクチャーを受け、種をもらい畑に蒔きました。村のばっちゃん達からは、猿に食べられてしまうからやっても無駄だよって言われたのですが、ところがどっこい。周りの心配をよそにスクスク育ち、猿にも狙われることも無く一年目にしては大収穫。刈り取った蕎麦は束ねて軒先に干し、葉っぱが乾燥したら実を落として、縁側いっぱいに広げて数日干します。屑っ葉と実の選別は箕を使ってしますが、これが中々厄介な作業で不慣れな私は悪戦苦闘。見かねてばっちゃん達が助っ人に入ってくれました。さて当日は全蕎麦、二八、自然薯、ふのり、卵と言った具合に5種類の蕎麦を打ち、蕎麦がきも作って、参加者全員大満足の大満腹。8月の暑い最中に種蒔きをした甲斐がありました。

 

お次は餅つき大会。日頃頼もしそうな街の男友達は、へっぴり腰で一臼搗くにも息も絶え絶え。見かねた阿部じっちゃんが助っ人に。80才を過ぎても実に軽やかな身のこなし。一同感心して見とれている内に一丁上がりと言った具合に次々搗き上がりました。女たちは餅づくり。これまた街場の女は餅を千切る手がもたついて形になりません。またまたばっちゃん達の出番です。街場者の不甲斐無さが露呈してしまう餅つき大会でしたが、餅つきをしなくなって久しい村に杵搗きの音が鳴り響き、へっぴり腰の搗き手を囃したてる声。ひときは賑やかな餅つき大会でした。

冬支度の序曲も無事終了し、いよいよ本番、月兎庵の冬囲い。一年目は阿部じっちゃんにお任せして私はお手伝い。二年目はじっちゃんに教わりながらの冬囲い。いつまでも人に頼っていたら一人前の滝谷人には成れないと、三年目はほとんど一人でやりました。「私もまんざらじゃないね」と意気揚々。ところがそれが失敗の元。まだまだ修行が足りませんでした。

 

2月のある日、縁側のひさしが折れたのです。例年でも2メートル以上も雪が積もる滝谷は、昨年は17年ぶりの大雪とか。運動不足の解消に時折雪掻きに出掛けると、月兎庵はすっぽりと雪の中。雪下ろしをしなくても良い様にトタン屋根に葺き替えたのですが、普段生活をしていない所為で屋根の雪が解けずに月兎庵は雪だるま状態。その雪が一度に落ちての出来事でした。今年は昨年の二の前を踏まないように心して掛かります。

 

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