滝谷便りno.18

00.9.4.

月兎庵 庵主 中矢 澄子

皆〜んな輪になって

 

お元気ですか

暑い暑いと言っている内にもう9月。昨日は久々に朝からパラパラと雨が降り出したのでミョウガ採りに最適とばかりに滝谷に向かいました。

エッ、何故最適かって。ミョウガは夏茗荷と秋茗荷があって今採れるものは夏茗荷なのです。だいたいはお盆の頃が収穫時期なのですが今年は冬が長かった所為で我が月兎庵の庭と農園の夏茗荷はやっとニョキっと出て来たばかりで、「さー収穫だ〜」と勇んでも、暑い時期はあの強敵アブが徘徊していてとても恐ろしくてミョウガ採りどころではないのです。

と言っても採りだしたら「欲」を援軍にガンバリますけどね。でも居ないに越したことはありませんから…。アブは雨が降るとパッタと居なくなり、お天気続きになるとワンワンと出て来るので雨上がりの時が最適なのです。が昨日の滝谷は一ヶ月半ぶりにバケツをひっくり返した様な雨でした。一瞬たじろぎましたが丁度雨も温め。シャワーに入ったと思えば何のその。ミョウガ採りのついでにこのところさぼっていた草取りもしたら下着までずぶ濡れ。おまけにズボンの滴が長靴の中にまで入って溢れ出す始末。他人様から見たらまるで気が触れた有り様でしたが、子供の時に大雨が降って来てもわざと傘を差さないで歩いたあの時の様な爽やかな気分でした。

爽やかな気分になったのは私だけでなく山々の木々、畑の作物、村人も。だって、ずーと雨が降らなかったので木々はくすんだ緑になり、畑の作物は皆一応にしな垂れて人も植物も夏バテ寸前。元気なのは、あの憎きアブだけ。夏バテ寸前の村に緊急司令・給水制限が出た矢先でしたから正に恵みの雨でした。秋を告げるかのように一日中雨が降り、お陰で一気に気温が下がって慌てて長袖シャツを箪笥から引っ張り出して着ました。これから滝谷は一気に秋に突入して行きます。急に涼しさを越えて寒くなると、暑い暑いと言っていた夏を思い出しました。この夏は暑さと疲れでダウンし、儀礼的なお役所の会議はさっさとキャンセルしても月兎庵の遊びプログラムの恒例になったソーメン流しや、新メニューの蕎麦の種蒔きはしっかりやりましたヨ。

 

そーめん流しは2度目。竹筒のセティング係の進さんは準備の手順も手慣れてきて、今年は工夫を凝らして半割にした竹をくの字に2段組にしてくれました。長さ10メートル。昨年の2倍の長さになったお陰で30人余りの参加者も陣取り合戦をすることなく冷たくてうんめ〜そーめんを堪能。これで確実に月兎庵の定番メニューに決定

でも好評で年々参加希望者が増えたらどうしようとチョット不安がよぎったその時、この日参加してくれた若き意匠デザイナーの三留君、「や〜、そん時は竹筒を村一周させては…」とチョット無責任だがおもしろい提案をしてくれました。一周は無理だが我が月兎庵は村の上に位置しているから村の外れまではなだらかな坂道。滝谷縦断そーめん流しが頭にひらめいてしまったから困ったもんだ。きっと何時か皆の迷惑を顧みずにやるだろーな〜。

そん時は皆さんお手伝いお願いしますね!!エッ誰〜れ、今から逃げ腰になってる人は。逃げても無駄無駄!!月兎庵の庵主は人もGETしますから…。その証拠には、この夏の炎天下で蕎麦の種蒔きにGETされた犠牲者が4人もいたのです。そのお陰で蕎麦は種を蒔いて一週間で10センチに成長。一ヶ月たった今は4〜50センチになって白い可憐な花をつけて満開。そよそよと滝谷の沢風にそよいでいます。

 

犠牲者ではありませんが、自ら火に飛び込んでくれた若者達もいました。西アフリカのジャンベと言う太鼓やオーストラリアの原住民アボリジニが吹くディジュリドゥと言うデッカ〜い笛などを演奏するAMA−KANO(アマカノ=アルファベットを逆さ読みするとお仲間 )の若者達。

夏の始まりに写真家ゲーリーさんの個展のオープニングパーティーでメンバーの一人古田木綿子さんに出会い、擦り減った下駄を突っ掛けていた彼女に私は興味深々。私のアンテナがビビーと振れた。

案の定、彼女はただ者ではなかったのだ。「アフリカの太鼓を叩いています」と聞いたとたん、私の脳裏に滝谷の農園のクルミ林が浮かび、直ぐさまコンサート開催の交渉開始。「あのね、私新発田の山奥に農園を持っているの。そこはね。滝谷って言って、じっちゃんとばっちゃんしか住んでいないの。農園にはクルミ林があってね。そこでじっちゃん、ばっちゃん達に貴方達の太鼓を聞かしてくれないかしら〜」って。

すると彼女の反応もすこぶる良好。さっそく携帯電話でリーダーの中野渉さんに繋いでくれて、その日の内に「アフリカ太鼓コンサートin滝谷クルミ林」が決定!!後は携帯電話とメールで「時期は」…「太鼓だからやっぱり暑い時がいいんじゃない」…「私ゲルピンだから出演料は私の手料理でOK」などなどを連絡取り合って8月27日に決定。好奇心旺盛な私は、村のじっちゃん、ばっちゃん達が一度も聞いたことのない音楽、リズムを聞いてどんな反応を示すのか日が近づくにしたがってワクワク度が増すばかり。一人でも多くの人に聞いてもらおうとチラシを作ってばら撒いた。

 

さー、コンサート当日。村の人達も楽しみにしていてくれたと見えて早々会場に来ていた。気温は30度は越しているはずなのに15メートルを越す高さのクルミの林の中はひんやりしていて、時折谷から降りてくる冷たい風がコンサート会場まで届き、最初の太鼓がポンと鳴った。

クルミの木々に、隣りの杉林にジャンベの音が木霊する。思っていた以上の音響効果だ。リーダーの中野さんが楽器の説明をしてくれて、次々に即興で演奏が続く。聞きなれないリズムのはずなのに、何処か懐かしい。アフリカのリズムは風に乗ってクルミ林を抜け、村まで届く。しばらくすると丸太の椅子は満席で立ち見(聞きかな)も出ている。演奏が佳境に入ると秋田美人の古田さんが卑弥呼の再来を思わせる踊りを踊り出した。

さー、皆さん。聞いてばかりでなくってリズムに合わせて体を動かしましょうー。さーさーと中野さんが声を掛けると、やおら阿部ばっちゃんが立ち上がった。フムさすがばっちゃん踊るのかと思っていたら足元の伸びた蔓草を採り出した。なんと、その手つき腰つきがリズムに合っているではないか。ばっちゃんは皆が蔓草に足を取られてはいけないと真剣な顔付きで草取りに夢中なのにアフリカリズムと草取りの絶妙なコンビネーションに思わず会場に笑いが起こり、やや緊張していたじっちゃん、ばっちゃん達もリズムを取り出した。

すかさず中野さんはシェケレ、アサラト、カリンバ、ヨーヨー、拍子木など珍しい楽器を持ち出してはばっちゃん達に渡し、ばっちゃん達はそれらの楽器を振りながらいつしか踊りの輪が出来ていた。音楽に国境は無いとよく言われることだが、今ここでそれが証明されている。ばっちゃん達が楽しそうに踊っている。私は興奮気味にその踊りを凝視して見た。フム何処かで見たこの踊りは何処かで見たなんと、それは盆踊り!!や〜、参った参った!!…。アフリカのリズムを伴奏に盆踊りを踊ってしまう ばっちゃん達の何としなやかなことよ。で、この日のコンサートの後半はじっちゃん、ばっちゃんの美声も飛び出してアフリカのリズムあり、40年ぶりに唄ったと言う滝谷音頭あり、滝谷青年賛歌ありの実り多いコンサートになり、これまた月兎庵の恒例イベントになりそうです。イヤ滝谷の恒例イベントになりそうですから今年逃してしまった人は来年は是非いらして下さいね。

 

始めて聞いた滝谷音頭、滝谷青年賛歌。辺鄙な山里は年々人口が減るばかりで村の盆踊り大会が無くなって既に40年経っていました。唄っていたじっちゃん、ばっちゃん達の顔は40年前の皺も無くピーンと張った青年、壮年の頃の顔にタイムスリップし、晴れやかな表情なのに私にはチョッピリ寂しげにも見え、何故か胸がキュンとしてしまいました。ここ滝谷は優秀な人材が育ち、子供達は村を出て都会で医者や企業家になっていると聞いています。もう二度と滝谷に戻ることはないでしょう。せめて親が健在な内は頻繁に帰省して欲しいものだと思った瞬間。アッいけない!!そー言えば私もここしばらく田舎に帰ってなかったッケ。へへへ…

皆さ〜ん、たまには親孝行しましょうネ。

では、また。

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