滝谷便りno.11

00.1.15.

月兎庵 庵主 中矢 澄子

「思いもよらぬお客様」

 

新年が始まって、よっしゃーやるゾ!と気合を入れたばかりなのに、今年から成人式が第二月曜日に変わって三連休。いきなりフニャとなりながらの仕事始めと新年会始め。土曜の夜、新年会が終わって行きつけの近所の小さなカフェに立ち寄ったら、いつもは若者達で賑やかなカフェも連休初日とあって店には一人の客も居ず、マスターがうたた寝でもしていたのかボーとした顔で出迎えてくれた。暇なのを幸いに写真好きのマスターとひとしきり写真談義に花を咲かせていると、ドアが開いて、ニョキニョキ伸びたタケノコみたいな外国人3人組が入って来たのです。話を聞くと4ヶ月前に日本にやって来た研修生とのこと。一人はスペイン人の25才のハビー、もう一人の男の子はスエーデン人のオスカー22才、一番背の高い彼女はオランダ人の26才のサマンサ。JRチケット乗り放題2500円で各駅停車を乗り継いで9時間かけ東京からふらっと新潟にやって来たらしいのです。いかにも学生らしい行動にアメリカの大学に行っている娘を思い出し、親近感も手伝って片言の日本語と英語で予期せぬ国際交流とあいなった次第。

 

「新潟でお薦めの場所は?」と聞かれ、これと言って特徴のない新潟市街地を思い巡らせていたら、フッと雪が頭をかすめた。「SNOWSNOW…何たって今の時期、雪よ!」と呟くと、オランダ人のサマンサ「オランダには雪降らない!見たい!!」

「雪だったらね、ここから車で一時間の所に滝谷と言う村があってね…」といつしか滝谷PRに熱が入ってしまい、月兎庵の雪かき動員として翌日3人を案内することになってしまった。  

朝、宿泊先のホテルに迎えに行くと、さっそく「案内することになってしまった」ことを痛感。なんたって自慢じゃないけど古に覚えた英単語は年々忘れて行き、海外旅行をする度にその都度オーバーアクションで乗り切っている私にとって、苦行が待ち構えていたのだ。ハビーはさすがにラテン系の血をひくだけあって、やたら好奇心が強く、見るもの聞くもの容赦なく質問してくる。サマンサは3人の中では一番日本語が達者で日本語で語りかけて来るが、珍文続出で意味不明に陥り、本人もどんどんフラストレションが溜まって、もどかしそうにしている。「英語でしゃべってもいいよ。たぶん理解できると思うから…」と告げると、すっきりした顔で会話を続行。どうやら私達4人共ヒヤリングの方が得意らしい。英語の質問に対して日本語で、日本語の質問に英語で答えると言った風な妙な会話が飛び交っての道中だが、なんたって4人とも英語は母国語でないからオーバーアクションの連続で体も脳もぐったぐた。

ああ〜もうだめダ〜…と思った頃に、ようやく滝谷到着。

道路から玄関先までの10m。ここのところの穏やかなお天気のお陰で雪が解けたとは言え、まだ1mも積もっている。その上温度が上がり雪が緩んでいる為にズボズボはまって、実に歩き辛い。車のトランクからカンジキを出し3人に薦めると、さっそく好奇心旺盛なハビーがトライして来た。すっかり気に入ったらしく、玄関先までの雪かきの間中ご愛用と相成り、西・蘭・瑞、 雪かき3国同盟軍はりっぱに任務を遂行し、突如月兎庵に十戒に出て来たようなモーゼの道が現れたのである。

 

ご褒美に月岡温泉の公衆浴場に案内し「じょんのび、じょんのび」と疲れた体と頭を休めて帰路に着いたが、さすがこの3人、成績優秀で選ばれて国費で研修に来ているだけあって、はじめて聞く日本語は直ぐにメモを取り次々に単語の数を増やしていった。とりわけ「雪かき」は印象深かったとみえて、東京に帰ったら先生に教えてあげよう〜ってニコニコ顔。私と言えば一度もメモも取らずに折角の無料英会話レッスンを無駄に過ごしてしまって・・・・後悔の年明けにならない様に気を引き締めて行かなっくちゃ、と戒めた次第で・・・。

21世紀はどの様な時代になりますか?と言う世論調査に「世界中のほとんどの人々が母国語以外にも23カ国語を話す」と迷わず答える私。そして「置いて行かないで~」と叫んでいる私。

では、また。

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